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公開日:2020年4月24日

マウナラニリゾート内のコンドミニアムからのお迎え。

バンでゲートを超えてロビーに近づくと黒づくめの女性がタバコを片手に立っていた。胸元は大きく開いてはちきれそうな谷間がのぞき、激しくうねる豊かな黒髪が、一層その褐色の肌を際立たせている。ふくらはぎをぎゅっと締め付けたレザーブーツとタイトなスカートの間に現れた両脚に心を惹きつけられた。

 

その横には携帯用の灰皿を持って、寄り添う様に男性がっ立っている。いや、男性だと思ったのは、男の服装をまとっていたからだけで、半ば勝手な思い込みに近い。というのもその人はすらりとした若者で、きれいに漂白された存在のようにに見えたからである。さしずめ魔女と稚児(ちご)と言った感じだ。そしてこの二人は紛れもない夫婦だった。やはりこんな日は何かありそうだ。

ユイさん(仮名)の最初の夫は京都の綾部出身の人だった。同い年の二人は学生時代にテニスサークルで知り合い、卒業後まもなく結婚。しかし彼は社会人になってから次第に鬱気味となり、大都会のストレスから夫を解放するために、綾部への移住を決意したという。彼の実家は農家だった。

「ねっ、一緒に農業しようよ。」

東京育ちの彼女にとって、綾部で農業というのは、革命的な変化。果たしてやって行けるのかどうか。しかし、人生の伴侶が、傍で生きる力を失ってゆくことは耐えがたいことだ。はっきりとした返事もできなくなったご主人を、自らの確証のない心もろとも動かそうとした。そして、思い切った結果、あゆ漁で有名な由良川水系に広がる豊かな風土を有する綾部の農家に嫁ぎ直す形となった。

彼は、その長男っだった。妹さんはすでに結婚し、京都市内に住んでいる。ご両親は数年前より、兼業から専業へと切り替え、水耕栽培を主としていた。大きな農家の造りの離れを改築して、そこが二人の新居となった。両親は大喜びで、彼女も心を決めて精進し、着実に山里の生活に馴染んでいった。

おかげで鬱気味の彼も随分と良くなり、ようやく心にもそよ風が通い、表情にも輝きが見られるようになって、家業だけでなく地元団体の仕事も手伝うようになっていた。またこの家には、80歳を超える祖母が健在だった。今ではあまり見かけなくなったが、腰がまかっだ痩身の人で、しかし毎朝6時には自分の庭だという畑に出て、昼までの間、よく働く。そして、最もユイさんの心の支えになっていたのも、実はこの義理の祖母だった。

「ワテの孫娘や」

そう言って大層可愛がってくれる。彼女はこの祖母のとの時間が楽しくてならなかったので、つとめて朝は、その畑仕事を手伝うことにしてた。子供の頃の砂遊び以来、ほとんど土いじりなどしてこなかったユイさんにとってはいろいろ学ぶことが多い。ミミズも触れるようになって、作物を荒らす虫も潰せるようになった。そして何より、仕事の手数や思い入れに応えてくれるかように、美味しそうなトマトやキュウリ、大きな大根や肉厚の青菜が育ってゆくことが、嬉しく思えた。思い切って東京を後にして、やっぱりよかったんだと思った。月日は流れた。

ある日のこと、朝の畑で祖母が仕事の手を休め、曲がった腰をさすって伸ばしながら、

「ユイちゃんが、ワテらをてつどおてくれるのはほんまに嬉しいこっちゃ。」

と目尻に深いシワを何本も刻んで笑った後、一瞬真顔になって、見上げている彼女に告げた。

「ユイちゃん、せやけどなぁ、あんたはここで暮らす人とちゃうと思うで。あの子もおかげさんで元気になったしなぁ、もう一回、よぉ考えてみぃ。可愛い孫娘や、あんたのほんまにしたいようにしてほしい。ワテが応援するさかい。」

ツアー中にこんな話を聞くことができたのも、実はその日はゲストが、このお二人だけだったからだ。こういう日はたまにある。年に、いや半年に一回はあるのだ。しかし今まで経験上、ひと組だけを案内するという日には、必ずと言っていいほど、奇譚章がゆっくり聞けるものだ。アル中の鬱の人、自殺未遂の元エリート、異星人とのコンタクティー、イギリス人とイタリア人の彼氏を持つ若い女性、対人恐怖症のなんちゃってパンクなどなど、あたかもその人に、周りの目を気にさせない空間を提供するがために与えらた状況としか思えない。結果、ハワイ島の自然に抱かれて、いろいろと話してくれる。けだし、その日も期待していた。

ユイさんはその後、離婚して単身、東京に戻った。

「あたしは一体何がしたいの?!」

その問いかけが、あれでもないこれでもないと、彼女を次々と様々な仕事へと駆り立てることになる。綾部の祖母の言葉どうり、自分にはやるべき何かがあると思えるようになっていたものの、しかしそれが何かわからない。募る焦燥は次第に大きくなり、時として怒りとなって心を苛んだ。ある日、途方にくれて、渋谷を歩いていると、時ならず、夕立に見舞われる。しかしその中を身も心のずぶ濡れになって歩き続けていると、ついにいてもたってもいられなくなって、足を止め、天に向かって大声で叫んだ。

「いったいどうすればいいのよ!」

そこはちょうど、ネイルサロンの前っだった。

「これだ!」

その後、知人のつてでとあるブティックの一隅を借りて、小さいながらも自分のネイルサロンを始めることになる。現在35歳。都内に七店舗のサロンを持ち、パートなしの正社員だけを30名を抱える経営者である。

「あたしの仕事は、社員に幸せになってもらうことよ。」

さすがに車両内で遠慮してもらっているが、それぞれの観光スポットではそのヘビースモーカーぶりが、圧巻でもあった。屈託なくもらいタバコをして共に煙を吐く。なんとユイさんは、鼻腔から吐く。やはり圧巻である。一本くわえるごとに白いご主人がすかさずライターで火を灯す。キラウエア溶岩台地に横たわりながら、いろいろと話してくれた。黒々とした溶岩の上で、もとより黒づくめのユイさんの横にはべる物静かなご主人の姿が、やけに白く浮き上がっている。

「ハワイ島には、年に3回来たこともあるわ。この島は力をくれるし、いろいろ自分の思いがクリアーになる。だからあたしはこの島に青いノートを持ってくるのよ。そのノートはよくなくしてしまうんだけど、不思議なことにハワイ島に来るとなると必ずと言っていいほど見つかるわ。そしてね、ここにいる間に、三つだけ、実現したいことを書き込むことにしているの。で、絶対それは実現するのよ。」

後で知ったことだが、デスノートというコミックがあるらしい。そこにヒントを得たのかもしれないけれど、とにかくそういう技を実用して結果を出しているところがいい。とにかく、この人は魔女だ、間違いない。みんなの幸せのために奔走している魔女だ。

みんなの幸せのために願えば叶うのよ

あのお婆さんは正しかった。この人の将来が楽しみだ。大きく発展する成り上がりの成功物語としてではない。みんなのためにという基本の鋳型に流し込まれる紛れもない情熱が一体これから、どのようなものを生み出してゆくのだろう。

ところで、そろそろはっきりさせておかねばならないこと、それは、この二番目の夫、清麻呂様との馴れ初めである。

あの大雨の中でついに自分の道を見出してから現在まで、このユイさんのことだ、相当の努力をしているに違いない。当然、肉体的にもかなりの負荷をかけて来ている。いつの頃からか、とある整体院に通うようになった。そこにで、研修生として学んでいたのが、今のご主人だ。

ひと目惚れだったらしい。電光石火、食事に誘った。その日からお付き合いのようなものが始まってゆくのだが、なかなかどうしてこの男性、のれんに腕押しのていで、何を言ってもにっこりと頷くだけ、誘えば来る、行こうと言えば共にゆく。したいと言えば一緒になんでもする。決して拒まない、しかし誘ってくる気配や、君とこうしたいなどのはっきりとした意志が一向に感じられない。つまり、受容の結晶体なのだ。そうして1年経った。

その夜はユイさんがたっての希望だった銀座のレストランを予約した。フランス製のメルローで静かに乾杯、思いっきり雰囲気を醸し出すようにしたらしい。今宵は特別な晩餐なのだ。

前菜からメインへとゆったりと時が流れる。

「これ、美味しわね。」

にっこりと微笑む彼

「そのリブアイ、ちょっともらってもいい?」

にっこりうなずく彼。こんな調子でデザートまで進んだ。

「ショコラムースのタルトにしようか?」

やはりにっこりしている。ついに彼女は思い詰めた。

「ねえ、あたしたちこれからどうしたいの?」

これは、知り合って以来、ユイさんがした初めての質問らしく、彼女曰く、胸がドキドキしてこれが精一杯の言葉だった、らしい。それに対して、彼は、ただひたすら真っ赤になったそうであるが、この時、心の扉を全開にして返答を待っていたこの魔女の両眼は烈火の如く燃え上がって、そのまますっくと立ち上がり、あごで彼を促して、婦人用の化粧室に連れ込んだ。

「あたし、思わず彼の胸ぐらを締め上げて怒鳴ったわ、はっきりしろ!、

お前の魂、喰ってやろうか!」

こうしてめでたく魔女ユイは、その場で正式にプロポーズを受けたのであった。

なおこの件に関しては、あらかじめ青いノートに書かれていたかどうかは、今となってはもう知る術はない。しかし、ほのかに

人生の不可思議な螺旋

も見える。

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ポハク西田
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