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公開日:2020年5月8日

 

そう、その日は突然やってきた。

暮れなずむ西の空のくれないに、ある人は見とれまたある人は心地よくまどろみ、あとわずかで長いこのツアーの1日も幕を閉じようかという車窓の眺めは、日々見慣れているはずの光景とはいえやはり、ガイドの心をも和ませてくれる。ダッシュボードの携帯がなった。運転しながら何気に取った。

「今すれちがったよ」

それは駒橋(仮名)さんの声だった。もうずいぶんとなるが、ツアーを通して知り合った彼は、10歳ほど年上の大阪の風雅な数寄者だ。毎年の様に来島する大のハワイ島マニアで、食事などに家族ぐるみでよく招かれていた。ある意味でツアーガイドよりも島の内情を理解している様なところもあってなぜかとてもこのガイドを可愛がってくれる。今回は奥さんとコナのコンドミニアムに一週間の滞在となっているらしく、その日はどうもレンタカーで島の北部やコハラコーストの美しいビーチなどで1日をのんびりと過ごした様だ。夕陽をハプナビーチで満喫したあと、コナの仮のわが家へと南に車を走らせていたところ丁度、北のホテル街へ向かって走るツアー車両と行き合ったというわけだ。

その朗らかな声からも、今回の滞在を満喫していることがわかった。奥さんの声はおそらくその傍であの可愛らしい笑窪を両頬にたたえてニコニコしている表情をありありと連想させた。今の日本での慌ただしさや息苦しさが誰の心にも幾重にも重なり合って人は囚われの身、まさに束縛の心。そしてその生命はまさに拘束状態。しかしハワイ島を訪れる人々はその不思議な島の力で解放され、蘇る。

その蘇生のほんの一部だけではあるが、手助けとなるツアーガイドの仕事に、思えば気づかぬうちに就いていたということがなんとも幸いである。なんであれ人が喜びを得るその手伝いが仕事であるならばそれは幸いなのだ。その幸いはやはり湧き上がる自らの喜びにしかと裏打ちされている。そして仕事とは本来そういうことなのだろう。

コナ国際空港に近づいてきた。州道19号とフアラライ山へと延びるカイミナニストリートの交差点。

ツアーバンはなんとか道脇で止まった。無情にも押しつぶされたフロントから金属製の内臓器官というべきものものが無軌道に、そしてどうしょうもなく飛び出して黒い血のりが方々から吹き上げている。折り紙の様になったボンネットは亀裂の入ったフロントガラス越しの視界を遮っていた。不気味な静寂が一瞬、聞き慣れない幾つもの呪詛の様な音を際立たせた。シューシューと白い悪臭を伴った蒸気がどこからともなく吹き出している。思い出したかの様に、パンという音響と共に窓ガラスが何枚か割れた。真っ暗な車中に突如鳴り響く悲鳴は、悲劇のあらゆる要素に火をつけた。あれほどまでに穏やかな寛いだハワイ島の夕暮れ時の車中が今や恐怖と動揺と混乱と絶叫の巣窟と化したのである。

何が起こったのかを把握するのにしばらくかかった。助手席の女性は足元に立ち込める熱気に

「熱い、熱い、」

と身悶えしている。暗がりとなった車内後方がどうなっているのか、正確に見て取ることができないが、鳴き声と叫び声は途切れもなくこだましていた。

「みゆちゃん大丈夫?みゆちゃんしっかり!ねえみゆちゃん!」

すぐ後ろでは、彼女の母のその半狂乱の姿が脳裏に放射された。

そんな車中で運転席に座ったまま、張り詰めた静謐に心は消え果てて、ただ宙に視線を浮かべて言葉を待っていた。

空港近くの交差点に差し掛かり、青信号でそのまま直進した。と、反対車線の対向車がなんの前触れもなく、スゥーッと凍結した湖面を滑る様に右折を始める。我が目を疑う。右折方向指示器のてんとうはまるでない。我が目を疑う。しかし反射的にハンドルを右へと切り始め、ツアー車両は交差点中央部からゆっくりと前方右方向へと回避運動を開始。しかし左ハンドルの運転席からは当初、左前方に見えていたその危殆を呈する対向車は結果として無慈悲にも運転席の車両側面に激突し横腹をえぐりながら後方の客席の窓ガラスを粉砕しつつ、遂にその鬼トラックとツアーバンがお互い反対方向を向いて並んで止まったのだった。突如発生したほんの10秒足らずの出来事である。

秋の風に誘われたイチョウの葉の様に、舞い降りた言葉があった。

「ありがとうございます」

そう、

きっとこの出来事にも意味があるのだ。

そして自分のことは忘れ去って、今この時にお客のためになすべき最善を尽くそうと覚悟が決まった。取りも直さず一刻も早く皆を外に誘導して避難させねばいつ車両が爆発するやもしれない。しかし事もあろうに、運転席のドアは突入してきたトラックによってねじ込む様にいびつな突起物となってこちらのあばらを圧縮して開けようとしてもびくともしない。なんとかシートベルトは外せたので、中腰となって体躯をひねり両手で力の限り押し開けようとすると、ギィーッと嫌々ながら開いてくれた。

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ポハク西田
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